親の終活を語る上で避けて通れない大きなテーマの一つが、お金の問題。
中でも一番困るのが、「認知症になったら銀行口座からお金が引き出せない」というリスク。
親本人の口座にある程度のお金があっても、引き出せなくなってしまう。事実上の凍結です。
そうなってしまうと、親の生活費はもちろん、
医療費や介護費用、実家の固定資産税まで、
全部、家族が立て替えなくてはいけなくなるのです。
ということで、必要に迫られて調べた選択肢とメリットデメリット、
ビーノが選んだ結論をシェアします。
結論。家族信託+ネット銀行が使い勝手良好。
例によって長くなるので、検討を重ねた末にたどり着いた結論を先に書きます。
離れた実家に暮らす老親の資産管理には、
① 家族信託を締結して不動産と管理に必要なお金を信託口座に入れておく。
② 残りの預貯金はネット銀行に親名義の別口座を作っておき、ネット上で管理する。
③ 日常のお金は元々の親の口座に残しておき、足りなくなったら②から振込み補充する。
これはビーノの場合で、もちろん最適解は諸条件によって変わると思います。
では、詳細行ってみましょう。
認知症になると預金の引き出しができない。
「認知症になると、本人名義の預金口座が凍結され、お金が引き出せなくなる」。
これが、老親のお金の管理に関する一番のリスクといわれています。
資産が億近くある富裕層だと遺産相続問題とかがより上位に来るのかもしれませんが、
ビーノのような庶民にとっては、親が生きている間の生活資金の方がずっと大問題です。
親には長生きしてほしいけれど、生きていればいるほど生活費がかさむ。
亡くなればもちろん凍結は解除されて相続が発生するわけですが、
それまでどうやって乗り切るのか・・・。
下手すると、「親の介護費用のために子供の学費が出せず進学をあきらめた」とか、なりかねないわけです。
国公立に行ける学力があればまだしも、絶望的にできない苦手教科があって、
私立なら3教科に絞って勉強すれば一流大学に行ける学力があるのに国立は絶望的。
・・・という場合、ありますよね。
ウン10年前のビーノが、まさにそれでした。
高1の時数学が絶望的にできなくて、100点満点で2点とか3点という赤点ラインをはるかに(下に)超越したアクロバットな点数を取って苦しんでいました。
ところが申し訳ないことに3年になって数学がなくなったとたんに、成績が急に上がりました。
小学館のマンガ日本の歴史で登場人物の顔や台詞まで憶えていた得意の日本史を武器に、
不登校時代の読書量をベースに小説もどきを書きまくっていた国語力と、
一応まじめに勉強した英語の3教科で学年1位を取って私立文系の第一志望に合格したズルい奴でした。
(なんかズルいけど、ルールの中で戦っていました、過去のことですがなんかすいません。)
今中3の娘にも同じ文系の血が引き継がれているような気がします。
物心つく前から言語聴覚士の父による読み聴かせのシャワーを浴びて育ちましたので。
ちなみに下のボウズは文系でも理系でも体育会系でもなく、のほほん系です。
父ちゃん釣りばっか行ってましたので。
将来は・・・
・・・親のお金の話に戻りましょう。
「親が早く死んでくれれば、子供を大学に行かせられるのに」とか、
そんな親不孝なこと、思いたくないじゃないですか。
でも現実問題、普通にあり得るわけです。
そうならないために、事前に手を打っておきましょう。
実際にお金が動かせなくなるのか?認知症の基準は?
とはいえ、認知症になると、即、お金が引き出せなくなるのでしょうか?
だとしたら人権問題です。
だって、認知症になったって、衣食住その他日常生活にお金はかかるし、
趣味や娯楽にお金を使うのだって、自分のお金なら自由じゃないですか。
認知症になっただけで銀行にお金を取られてしまったら、財産権の侵害です。
ではどういう時に口座が凍結されるかというと、
「認知症の影響で、お金の取引や意思表示がしっかりできない状態」
になった場合、第三者に勝手に資産を使われたりしないように、預金取引が停止される訳です。
それならば納得いきますよね。
自分で取引の意思表示ができないはずなのに、
家族や関係者や無関係の人が自分の都合で勝手にお金を使ったら、泥棒ですから。
ビーノは高齢者のリハビリに関わる仕事をしているので認知症の人と日常的に付き合いがあるのですが、
認知症といえど0か1かでデジタルにスパッと分かれるのではなく、
認知機能がやや低下しているけれど社会生活は遅れる状態から、
周りのことも自分のことも分からなくなり無反応になった状態まで
グラデーションで様々、というのが実感です。
そして、これはあくまでも臨床的な印象ではあるのですが、
「認知症がそこそこ進行しても日常レベルの意思表示はしっかりできる人が多い」と思います。
金融機関の人が調査に来たとしても、
例えば長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)やミニメンタルステート(MMSE)のような検査をして「何点以下は凍結」みたいなことはせず、
あくまでも基準は意思表示ができるか否かだと思います。
父が亡くなるほんの数ヶ月前、郵便局のかんぽの受取人変更を勧められて、
父の特養に行ってかんぽの人に面談してもらいました。
その際の確認としては、自分の姓名が言えるかどうかと、
自分で署名ができるか、
保険契約をする意思表示ができるか、
だけでした。
細かい契約内容の理解は求められませんでした。
ビーノの父はその時点で結構な認知症で、
自分の嚥下障害が理解できずアンパン食べさせろとか仕入れに行って店をやらなきゃとか状況理解が無茶苦茶で、
小脳梗塞の影響で失調性構音障害で発話も非常に不明瞭で、
署名も失調でぐちゃぐちゃでしたが、保険契約は認められました。
新規契約じゃなかったから若干基準が緩かったかもしれませんが。
ポイントとしては、意思表示さえできれば診断の有無や認知機能検査の点数でスパッと切られたりはしないようだということです。
ではありますが、意思表示が完全にできなくなったらアウトですし、
これから挙げる対策のうち、公に認められている方法を取るならば契約を結ぶ必要があるので、
複雑な契約内容を理解できるうちに取り組む必要があります。
親の資産管理にはこんな選択肢がある。
ここから具体的に、親の資産管理方法の選択肢を挙げていきます。
法的にはグレーだけれどお手軽な手段から、
法的に認められて完璧だけれど手間もコストもかかるガチガチにヘビーな方法まで、
選択肢はいろいろあるので個々の条件に合わせて選ぶ必要があります。
また、ビーノはお金の専門家ではなく、
あくまでも自分が調べたり経験したことを書いているに過ぎません。
間違いもあるかもしれませんので参考までに、
最終的にはご自分で確認して自己責任でお願いします。
選択肢
- 既存の親の口座でキャッシュカードと暗証番号を預かる。
- ネット銀行に親名義の新たな口座を作り、ネット上で管理する。
- 既存の親の口座で代理カードを発行してもらう。
- 生前贈与で子供に資産を移す。
- 家族信託契約を締結する。
- 成年後見制度を活用する。
リストの上の方の選択肢ほどライトでインフォーマルな対策です。
これらは手間や費用もかからない代わりに法的には弱い。
逆に下に行くほどヘビーでフォーマルな対策で法的に認められて安心ですが、
代わりに手間暇やコストもかかるという並びになっています。
既存の親の口座でキャッシュカードと暗証番号を預かる。
もともと親が使っている親名義の口座で、
そのままキャッシュカードと暗証番号を預かり、
子供が管理するという方法です。
この方法だと手っ取り早く何のコストも手間暇もかかりません。
が、法的には限りなくグレーです。
税務署が入ったり、兄弟など相続関係で利害のある人から横やりが入った時のために、
お金の使途を正確に記録しておく必要があります。
親のために使っていることが証明できれば問題ないですが、
そうでないと兄弟親戚とのトラブルや贈与とみなされて税金がかかったりする場合があるようです。
また、親のキャッシュカードを預かってしまうと、親自身で預金を引き出すことが困難になります。
完全に認知症になってしまって自分自身でお金の管理が全くできない状態なら仕方がないと思いますが、
まだ認知がしっかりしている親に関する予防的な対策としては、いろいろと支障があります。
また、逆に認知症になって理解ができなくなってからこれをすると、
「息子にお金を盗られた」とかいって物盗られ妄想が始まる危険性があります。
総合すると、この方法がうまく機能するのは、
相続関係で利害の対立する人がおらず、
かつ親と同居していてキャッシュカードを預からなくても済む場合のみではないかと思います。
ネット銀行に親名義の新たな口座を作り、ネット上で管理する。
既存の親の口座はそのまま温存して年金の受け取りや公共料金の引き落とし日常の支払いなどに使用し、
親名義の別の口座をネット銀行に作る方法です。
キャッシュカードは親に持たせておき、引き出し限度額を設定してネット上でこちらが管理します。
親の名義の口座を管理するのでこれもグレーといえばグレーなのですが、
高齢の親の依頼を受けてネットの操作を補助すると考えれば、
キャッシュカードを預かるよりはかなり薄めのグレーなのではないかと思います。
どの程度の金額をネット銀行に移し、どの程度既存の口座に残すのかは、
親の認知機能や健康状態、資産状況、親子の関係などによって変わってくると思いますが、
個人的には100万~200万円ぐらい残すのが良いのではないかと思っています。
何故かというと、手持ちの預金があまりにも少ないと不安を覚える高齢者も多いし、
できるうちはある程度の金額を自分で管理した方が認知機能の低下防止につながると思うこと。
かといってあまり多く持っていると詐欺に遭ったり、口座が凍結された場合の被害が大きくなりますから、
「ネット銀行にいくら移すか」ではなく、「既存の口座にいくら残すか」という発想の方が良いと思います。
この方法のメリットとしては、既存の口座はそのまま使えるので、
今のところ認知機能は保たれているのである程度の金銭管理は続けてもらいたいという場合に便利です。
また、キャッシュカードを預かる必要もないので同居していなくてもネットで管理できること。
資産運用なども含めていろいろと小回りが利きやすいのもポイントです。
既存の親の口座で代理カードを発行してもらう。
金融機関によっては、本人用のキャッシュカードを持ったまま、
代理人が預金を引き出せる「代理人カード」を作れるところがあります。
この方法は金融機関に公的に認められているというか金融機関が自ら作ったサービスなので、
法的にグレーではなくホワイトなのが一番のメリットです。
ただし、対応している金融機関が限られること、
代理人になれるのが同居の家族とか条件があることがデメリットです。
また、本人の認知機能がしっかりしているうちに発行手続きをする必要があります。
ちなみに調べてみて対応していた金融機関ですが、やっぱり条件がありますね。
金融機関 | 条件等 | |
ゆうちょ銀行 | 通帳、印鑑、本人確認書類、委任状 | |
三菱UFJ銀行 三井住友銀行 みずほ銀行 | 生計が同じ家族のみ | |
りそな銀行 東京スター銀行 | 同居家族のみ |
調べた限りでは、ビーノのように家を出て独立した子供を実家の親の代理人として認めてくれる金融機関は見つかりませんでした。
生前贈与を活用する。
文字通り、親の資産を生前贈与で子供に移し、子供が管理する方法です。
ある意味王道というか正攻法な気がします。
しかし注意しなければいけないのが、年間110万円の非課税枠まで贈与税はかからないけれど、
収入・所得にはなるということ。
ビーノ家がまさにこれなのですが、贈与によって子供世帯の年収が基準値を超えると、
子供の高校の学費補助制度の対象から外れてしまうという落とし穴があるのです。
ビーノは決して高収入ではないのですが、夫婦フルタイムで働いているので、
残業などによっては世帯の合計収入がいくつかある助成金の基準額の一つを超えるかどうか微妙なラインです。
110万も贈与されたら、どう考えても基準をオーバーしてしまい補助金が降りなくなってしまいます。
もらったお金が子供の学費に使えるものならばそれでもいいですが、
贈与の目的は親の資産の管理なわけですから、110万ぐらいもらっても資産管理の手間がかかるばかりで、子供の学費に回す余裕なんかありません。1千万円もらえば別ですけど。
そうするとガッツリ贈与税が掛かっちゃうので、親が生前に使えるはずのお金が減ってしまうのです。
成年後見人制度を活用する。
都合により順番を変えて先に成年後見制度の話をしちゃいます。
成年後見制度の概要
成年後見制度って聞いたことありますか?
家族信託よりメジャーな制度なので、ご存じの方も多いと思います。
というか、認知症になった親や障害者の経済的な権利保護のための王道中の王道です。
成年後見制度のメリットデメリット
メリットは
- 成年後見人(保佐人)になってしまえば、
銀行にも税務署にも役所にも兄弟親戚にも文句を言われず、堂々と親の資産管理ができる。 - 親が詐欺に遭っても後見人が管理していれば取引を無効にできる。
デメリットは、いろいろあります。
- 手続きが複雑で面倒。
- 初期費用がかかる。
- ランニングコストがかかる。
- 後見人の人選は家裁が決めるので、家族が選ばれるとは限らない。
- 専門家に依頼した場合、毎月3万円程度の報酬が発生する。
- 家族が後見人に選ばれた場合でも監督人がつき、監督人に報酬を払う必要がある。
- 資産運用ができない。資産はあくまでも被後見人のために使わなければいけないので、運用とかは認められないらしい。親のためであっても。
要するに、
「公的に認められる代わりに手間暇とコストがかかって小回りが効かない」
ということです。
この中でもビーノが最も問題に感じたのはランニングコストの点。
決して多くはない親の資産を守るために毎月2万も3万も掛けてたら、
長生きすればするほど資産無くなっちゃうじゃないですか。
権利擁護のための制度であるはずが、経済的な負担になるという。
本末転倒も甚だしいですよね。
結論:成年後見制度は資産をいっぱい持っているが身寄りがない、
または信頼できる人がいない場合に限って活用すべし。
番外:親の年金と支払いの口座はまとめておく。
どの対策を取るにしても、親名義の預金口座はなるべく一つにまとめ、
特に年金の受取りと生活費の引き落としを同じ口座にしておく必要があります。
何故かというと、年金が振り込まれる口座が凍結されていて現金の引き出しができず、
公共料金や税金、カード、介護保険サービスなどの引き落としが別の口座だったら、
A信金には年金が入金されてお金があるけど引き出せないから使えない、
B銀行からは生活費や税金が毎月引き出されて残高が不足し、
仕方なく子供が立て替え補充せざるを得ない・・・という事態になるから。
そうなると家計は火の車ですよ。
繰り返しますが、お金が原因で親の死を願うようにはなりたくない。
そのためには精神論ではなく、事前に手を打つ必要があるのです。
家族信託契約を締結する。
「家族信託」。割と耳慣れない言葉じゃないでしょうか。
「家族信託」とは、簡単に言ってしまうと、
預金や不動産などの資産を信頼できる家族に預け、管理してもらうこと。
約束が守られるように契約書を作って公的に認められるようにします。
家族信託のメリットデメリット
メリットとしては、
① 資産はあくまでも信託者(親)のもの。
受託者(子供)は資産を預かって管理する。
② 預かった資産は運用、売買も可能。
③ ランニングニングコストはあまりかからない。
④ 契約の自由度が高い。
などです。
逆にデメリットは
① 最初に契約書作成等の手間と初期費用がかかる。
② 比較的新しい制度で、専門家が少ない。
などです。
詳しくは追って別記事書きます。
選んだのは家族信託+ネット銀行
さてこれまで考え得るいろいろな対策メニューを挙げて検討してきましたが、
結局ビーノがどれを選んだかというと、
成年後見制度。
・・・は、無いですよね。これだけボロクソ言っといて。
主力は、家族信託です。
しかし、全ての資産を信託に入れる必要もないし、
そうしてしまうとデメリットも大きくなると判断しました。
ビーノと親が選んだ方法は、
① 家族信託を締結し、実家の不動産と、不動産管理に必要な預金200万円を信託に入れる。
② 親の年金受取りと生活費引き落としは既存の親の口座をそのまま活用し、200万円程度を残す。
③ ネット銀行に親名義の別口座を作り、残りの預金はネット上で管理する。
不足が生じれば③から②の口座にネットバンキングで振り込む。
なぜ③の別口座が必要なのかというと、
(実際は家族信託を始める前年から口座は付くってあったのですが)、
①の信託口座に全額入れてしまうと、成年後見制度ほどではないにろ、
運用や相続の面で小回りが利きにくくなってしまうから。
家族信託は自由度が高いんじゃなかったの?
と思うかもしれませんが、これにはビーノの実家独自の事情も絡んでいます。
果たしてどんな事情が?
そしてこの3段式にすることでどんなメリットがあるのか?
そのへんは次の記事に書きたいと思います。
いいオチが思いつかないので、母に買ってあげたショッピングカートでも貼っておきます。
ネット銀行といえば住信SBIか楽天銀行ですね。
SBIは現在紹介キャンペーンやって無さそうなので、
楽天銀行の紹介コードとか貼っときますか。
たしか紹介された方には1200Pとかもらえたかと思います。
(ポイント額は変動します。変わっていたらごめんなさい。)
わたしの紹介コード【P36844964】を口座開設申込の際に、
申込フォームの「紹介コード」入力欄に入力して口座開設を行ってください。▼お申込みはこちら▼
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